予定通りにいかない進捗、複雑に絡み合う要件、そして正解のない問いに立ち向かう日々。システム開発の現場には、外からは見えないいくつもの葛藤があります。
今回は、システムインテグレーション事業部(※)が手掛ける「大規模プロジェクト」の最前線を走ってきた3名が集まりました。プロジェクトマネージャーを務める小瀧さんと杉山さん、そしてリーダーの鈴木さん。立場もキャリアも異なる彼らは、いかにして困難な壁を乗り越え、信頼を築いてきたのか。大規模プロジェクトの裏側にある想いを語ってもらいました。
(※)システムインテグレーション事業部:事業や業務の課題に対し、多様な技術やアプローチを組み合わせ、解決策の立案からシステム構築、運用サポートまで一貫して対応。パートナーとして継続的に支援する。
参加メンバー
プロジェクト
マネージャー
小瀧 祐一
(おたき ゆういち)

2007年の入社以来、長年にわたりSAP社のERP導入・構築に従事。部内では「SAPといえば小瀧」と言われるほどの知見を持つ。現在は新たなビジネスモデルの構築や若手の育成にも情熱を注ぐ。
プロジェクト
マネージャー
杉山 法隆
(すぎやま のりたか)

2011年入社。大規模プロジェクトにおけるインターフェース基盤構築のリーダーを経て、現在は食品卸業のお客さまの物流領域を担当。2025年には育休を取得。現場の責任を果たしながら家庭の時間も大切にしている。
システムエンジニア
鈴木 裕也
(すずき ゆうや)

2017年入社。大規模プロジェクトでは杉山のもとで経験を積み、杉山の育休時にはリーダー業務を引き継ぎ完遂した。現在は小瀧のもとでさらなる高みを目指し、次世代のシステムインテグレーション事業部を担う存在として力を磨いている。
大規模開発の裏側。予定調和では終わらない壁
皆さんが共に歩んできた「大規模開発」とは、どのようなものだったのでしょうか。
あるメーカーさまの大規模基幹システム刷新プロジェクトです。構想段階から含めると5〜6年に及ぶ長期案件で、ピーク時は全体で数百人、メディアフォースのチームだけでも50人を超えるメンバーが関わっていました。
私たちはその中で、それぞれ異なる領域を任されていました。当時は私と鈴木くんが同じグループ、小瀧さんが別のグループを率いていたのですが、全員が基幹刷新という一つの大きな船に乗っている状態でしたね。
数百人が関わる巨大なプロジェクトだけに、一筋縄ではいかない場面も多かったのではないですか?
そうですね。私が一番頭を抱えたのは、マスターシステムの開発フェーズです。当初は市販パッケージの標準機能で対応する計画でしたが、検討を重ねるうちに「より使いやすく、より高度な運用を」というお客さまの熱いこだわりや、現場ならではの細かいご要望が次々と見えてきました。
それらを実現するためには、標準機能の枠を超えた高度なカスタマイズが不可欠でした。既存製品の制約と、お客さまの理想をどう両立させるか。その最適解を見つけるプロセスは、まさに「いばらの道」を切り拓くような難しさがありましたね。
私たちも似たような状況でした。インターフェース基盤の構築を担当していましたが、新しい要望の検討や議論に時間がかかり「要件が決まらない」という壁にぶつかって。本来なら構築に入っているはずの時期に、「現行システムはどうなっているのか」という調査フェーズに逆戻りしてしまったんです。
しかも対象となるインターフェースは8,000本近くありました。それら全てに対して「継承か、廃止か、統合か」を見極めていく。新システムを支える土台をつくるために、避けては通れない非常にタフな作業の連続でしたね。
突破口は、「本音の対話」と「仕組みの転換」
現場の空気が重くなるような状況下で、チームとしてどのように前を向いていったのでしょうか?
私が心がけたのは、「包み隠さず、正直に話す」ことです。現在の進捗状況や、今どのチームがどんな技術的課題に直面しているのか。そういった事実を、メンバーに対して誠実に共有しました。
もちろん、単に状況を伝えるだけでは不安を与えてしまいます。だからこそ「プロジェクト全体としては今ここを目指していて、そのために自分たちが集中すべき課題はこれだよね」と、一人ひとりのミッションを明確にしました。視界をクリアにすることで、全員が目の前の仕事に専念できる環境づくりを意識していましたね。
私は、組織の「仕組み」で解決を図りました。当時は他チームとの調整業務が膨大で、本来の作業時間が削られてしまうような状況だったんです。そこで、ある特定のメンバーに「コードを書くこと以上に、周りとの調整・ハブ役に徹してほしい」と役割を明確にしました。
大胆な采配ですね。
そうしないと、高い品質を維持し続けられないと考えたんです。結果、これがうまくハマりました。彼が情報を集約して交通整理をしてくれるようになったおかげで、開発メンバーは「つくること」に全力を注げるようになった。チーム全体の歯車がカチッと噛み合った瞬間で、あれは自分の中でも熱い展開でしたね。
チームとしては、少しずつでも成果が見えてきたことが大きかったと思います。暗闇の中にいたけれど、「やっとここが動いたね」「進んだね」という実感が積み重なっていくことで、光が見えてきた。一歩ずつでも着実に前進している手応えが、チームのモチベーションを再燃させるきっかけになりました。
信頼を築く、当たり前の積み重ね
困難を共にする中で、お互いの「仕事への向き合い方」に刺激を受けることもあったのでしょうか。
以前、お客さまから「杉山さんはスーパーマンだね」と言われていて。社外の方からそこまで深く信頼されているんだと、エンジニアとして純粋にすごいなと。
いや、特別なことをしたわけではないんです。
調査一つとっても曖昧なままにせず、あらゆる部署の方に聞きに回ったり、現場の資料を隅々まで読み込んだりして、徹底的に事実を把握することを大切にしていました。そうした当たり前の積み重ねが、納得感のある提案につながったのかなと思っています。
あとは、杉山さんはとにかく「口がうまい」んですよ(笑)。
(笑)。
あ、もちろん「説明がめちゃくちゃ上手」という意味で!
どんな複雑な状況でも、技術的な背景も含めて、誰が聞いても納得できるように翻訳して伝えてくれる。その安心感には、私もずっと助けられてきました。
逆に、私も鈴木くんに対して熱いなと思った瞬間があったな。プロジェクトの山場を越え、いよいよリリースの準備という重要な時期に、私は育休を取ることになったんです。もちろん責任者として、数ヶ月前から現場やお客さまに影響が出ないよう、徹底的に引き継ぎや体制の調整を重ねてきました。それでも少なからず不安がある中で、鈴木くんが「任せてください」と力強く言ってくれて。
……言いましたっけ?(笑)
言ったよ。その覚悟を聞いたときは、本当に嬉しかったし、安心して任せられると思いましたね。
当時は「やるしかない」と必死でした。杉山さんの後を継ぐプレッシャーはありましたが、長く共に歩んできたメンバーもいたので、みんなで力を合わせれば乗り越えられると思っていましたね。
鈴木くんは、そのバトンをしっかり受け継いで、今も責任を持ってチームを牽引してくれています。
また、私のチームでも若手メンバーの目覚ましい成長を感じました。最初は指示を待つ側だった子が、徐々に「この設計の意図はこうだから、こう修正しました」と、自分なりの根拠を持ってアウトプットを出してくるようになっていって。
技術的なスキル以上に、仕事に向き合う姿勢がプロとして変化していく。その瞬間を見守れたのは、管理職として何よりも嬉しかったですね。
自分の代名詞を磨く、次なる挑戦へ
こうした経験を経て感じる、システムインテグレーション事業部ならではのエンジニアとして働く醍醐味を教えてください。
システムインテグレーション事業部のプロジェクトは長期にわたることが多いので、人を育てるノウハウが蓄積されています。同じお客さまと深く長くお付き合いする中で、技術だけでなく業務知識までじっくり身につけていける。それは、エンジニアとして骨太なキャリアにつながるはずです。
あとは大規模プロジェクトだからこそ、若手がリーダー的な役割を担うなど一歩先のチャレンジがしやすい側面もあります。周りに絶対にカバーできるベテランがいる環境だからこそ、思い切って背伸びができる。
そうやって「ちょっとした背伸び」を繰り返すことで、ある日突然、成長のスイッチが入る瞬間があるんですよね。
ありますね。そういう若手の好奇心の火を、大切に育てていきたいですよね。
これからのビジネス拡大を見据えても、やはり若手の成長は最重要課題です。AIなどの最新技術をいかに使いこなし、お客さまにさらなる付加価値を提供できるか。そこを追求できる組織にシフトしていきたいです。
先輩たちの背中を見ていると、私たち若手も自分たちの武器を磨かなければと強く感じます。小瀧さんは長年SAPに携わっていて、社内では「SAPといえば小瀧さん」という代名詞が確立されていますよね。
そうだね。その背中を見て「小瀧さんのもとで学びたい」とメンバーが集まってくる。それ自体が、一つの大きな求心力になっています。
やりたいことを突き詰めて周りを巻き込んでいく姿は、私たち後輩にとっても目指すべき分かりやすい指針になっています。だからこそ、私自身も一つひとつ「自分の代名詞」と言えるものを増やしていきたいですね。
個々の強みが合わさることで、チームはもっと強くなれる。ここから後輩たちと一緒に、「仕事って面白い」と胸を張って言い合えるチームをつくっていきたいです。